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中年世代になったら考える「キャリアのリスクマネジメント」

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昨年の12月に発表された平成27年11月の一般職業紹介状況をみると、有効求人倍率はパートタイムを除く常用雇用で1.07倍となり、前年同月と比較して0.11ポイント改善しました。また正社員の有効求人倍率も、季節調整値で0.79倍となり、同じく前年同月比で0.1ポイント改善しています。 

昨今の中国経済の不振や原油安に起因する急激な円高・株安等により、今後の経済動向は予断を許しませんが、海外のリスク要因を除くと日本経済は堅調なため、当面の間は雇用環境も安定的に推移するものと思います。

一方で、雇用環境は好転基調にあるにもかかわらず、希望退職制度等に応募して企業を退職した中年世代ビジネスパーソンの再就職は、必ずしも順調に進んでいるとはいえないようです。 また、同じ会社の同じ部門の出身者であっても、再就職がうまくいく人とそうでない人に分かれる傾向がみられるようです。果たしてこの差は、どこから生じるのでしょうか?

■中年世代に必要とされる「エンプロイアビリティ」とは何か?
ビジネスパーソンの雇用市場における「市場価値」を表す考え方のひとつに、「エンプロイアビリティ」という概念があります。「エンプロイアビリティ」とは、雇用(エンプロイ)と能力(アビリティ)を組み合わせた造語で、ビジネスパーソンが自社以外の企業・組織に雇われるための能力や、その可能性を意味しています。再就職を成功に導くには、この「エンプロイアビリティ」を高めることが肝要とされています。

それでは「エンプロイアビリティ」とは、どのような能力を指すのでしょうか? 一般的にビジネスパーソンの能力は、以下の3つの要素に分類されます。

1.知識:  ビジネス全般に関する汎用知識、専門分野に関する高度な知識 ほか

2.スキル: テクニカルスキル(技術・技能ほか)、ヒューマンスキル(コミュニケーション力、人脈形成力ほか)、コンセプチュアルスキル(問題解決力、戦略的意思決定力、創造力)ほか

3.人的資質: リーダーシップ、モチベーション、レジリエンス(忍耐力) ほか

中年世代に必要とされる「エンプロイアビリティ」としては、業種や職種に関する専門知識のほかに、ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル、リーダーシップなどが高い水準で求められます。

また「エンプロイアビリティ」は、「絶対的なエンプロイアビリティ」と「相対的なエンプロイアビリティ」に分類できます。「絶対的なエンプロイアビリティ」とは、ビジネス環境の変化等に関係なく、どんな組織に所属しても一定の成果を上げられる「ビジネス基礎能力」に関連した雇用能力のことです。中年世代の場合には、所属する業界や職種に関する平均以上の知識や、チームマネジメント力、リーダーシップ等が挙げられます。

「相対的なエンプロイアビリティ」とは、労働市場の需給によって変動する雇用能力のことです。例えば現在では、ビジネスのグローバル化やIT化の進展により、人材市場では、グローバルビジネスやIT関連のスキルをもつ人材へのニーズが高くなっています。このようなニーズに対応できる能力をもつ人材が、「相対的なエンプロイアビリティ」に優れた人材ということになります。

このように、中年世代が再就職を成功に導くためには、「絶対的なエンプロイアビリティ」もさることながら、雇用環境の変化で変動する「相対的なエンプロイアビリティ」も、意識しておく必要があります。

■中年世代の雇用流動化が進展
一部の業種・職種を除き、日本におけるいわゆる「ホワイトカラー層」の雇用の流動性は従来、欧米諸国等と比較して低い水準に留まっていました。特に大企業では終身雇用が保障されていましたので、大企業に勤務する人は、「エンプロイアビリティ」などをあまり意識する必要がありませんでした。

しかし昨今では、業績が低迷しているとはいえない企業あっても、恒常的に「希望退職」を募り、組織の新陳代謝を図るケースが増えてきました。対象者は、特に従来「エンプロイアビリティ」など意識してこなかった中高年世代とするケースが殆どです。

国もこのような企業の動きを支援しています。一昨年、厚生労働省は再就職支援会社を活用して離職を余儀なくされる社員の再就職支援を行う企業に対して、再就職支援会社に支払う費用の一部を助成する助成金を拡充しました。同時に、再就職支援会社を通じて人材の採用を行った企業に対する助成金も新設しました。このように国は、再就職支援会社の活用を企業に促すことで、大企業から中小企業に人材のシフトが起きやすい環境の構築に取り組んでいるのです。

よって日本においても、ホワイトカラー層に属するビジネスパーソンの雇用の流動化が急速に進みつつある現実を、中年世代のビジネスパーソンは認識しておく必要が生じているのです。

■エンプロイアビリティの構造
エンプロイアビリティは、以下の図のような構造となっています。
エンプロイアビリティ

上の図にあるように、エンプロイアビリティは一般的にAとBの総和である、と言えます。筆者の体験をもとに説明しますと、筆者は約17年前に経営コンサルティング会社を創業する以前は、中堅広告会社の社員でした。当時はまだインターネット関連の広告ビジネスは黎明期であり、筆者を含め現在中年世代に属する広告会社の社員が身につけた前述の図Bの領域における能力は、アナログ広告の関連領域に関するものでした。

その後、広告業界ではインターネット広告が主流になったため、「アナログ広告世代」に属する人材の市場価値は著しく低下し、現在では、インターネット広告領域に深い知見をもたない人材の「市場価値」は、ほぼゼロに等しいといえる状況に陥りました。

一方で、17年前に、すでにインターネット広告時代の到来を予測し、自助努力によりインターネット関連のビジネスノウハウを習得した人材が、筆者の周りでも数名おられました。その後インターネット広告に精通した人材の「市場価値」は急騰し、現在では標準以上の報酬や待遇を提示しないと、そのような人材の採用は難しい時代となっています。

■「エンプロイアビリティ」を向上させる方法
上の事例のように、図のAの領域の能力向上については、自助努力でカバーできるケースも少なくありません。能力向上のためには、まずは「エンプロイアビリティ」を向上させることこそが、キャリアリスクをヘッジする上での最大の保険になるという認識を、強く持つ必要があります。

現在、日本企業を取り巻く環境変化は激しく、勤務先がいつ業績不振に陥らないとも限らないのが現代の特徴です。数年前まで、東芝やシャープ、ソニー、オリンパスなどの日本を代表する企業が、早晩経営危機を迎えるなどということを、誰も想像をしていませんでした。

このように、経営危機は急に訪れるため、突然経営危機に陥った企業に勤務する中年世代の多くの社員が、十分な準備が整わないままに「転職市場」に投げ出されてしまい、再就職先を見つけるために大変な苦労を強いられるケースが後を絶ちません。 そのような事態に対処していくためには、自分自身の「エンプロイアビリティ」向上のための投資を、日頃から意識的に行っていく必要があります。

次に必要とされることは、「エンプロイアビリティ」の棚卸しと、今後「転職市場」でのニーズが高まる能力を向上させるための「能力開発計画の策定と実行」です。例えば所属する業界の企業が、今後「インバウンド対応」に力を入れていく傾向がみられるといったケースの場合、自分の外国語でのコミュニケーション力を棚卸しを行い、今後業務で必要とされる外国語のレベルに達するための「学習計画」を策定し、学習を開始するといったアクションが求められます。

最後に、社外人脈の形成も重要なテーマです。特に、自分が所属する業界を超えた幅広い人脈を形成することは、様々な領域における知見を吸収することが可能となるため、エンプロイアビリティを伸ばす意味において極めて有効です。 そのためには、日頃から社外の勉強会やセミナーなどに積極的に参加する習慣を醸成することなどが求められます。

以上の通り、実際に転職活動を余儀なくされた場合、キャリアリスク対策をしっかりと行ってきた人とそうでない人の間で、活動結果に大きな差が生じるのは致し方ないことです。 ついては、出来るだけ早く準備を始めることこそが、キャリアリスクをヘッジする意味で極めて肝要だと考えられます。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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プロフィール

川崎 隆夫

Author:川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション代表取締役。 経営士/経営支援アドバイザー。経営学修士(MBA)。専門は新規事業開発、マーケティング戦略立案、リーダー人材育成など。 また最近は、教育機関・経営支援団体等でのセミナー、講演やメディア出演等にも積極的に取り組んでいます。
【メディア出演実績】 
日本テレビ系列「情報ライブ・ミヤネ屋」、テレビ東京「ニュース」、NHK-BS1,日経産業新聞、東京新聞、週刊SPAほか多数 

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