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「一億総活躍社会」実現のための「中高年転職市場」

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第3次安倍内閣の発足に伴い、安倍首相は「1億総活躍社会の実現」をスローガンのひとつとして掲げました。野党や評論家などからは「なぜ1億人が活躍しなければならないのか?安倍首相は活躍したくない人の権利をどう考えているのか?」「日本の人口は1億2600万人なのに、残りの2600万人は活躍しなくてもよいのか?」などといった、相変わらず的外れの、揚げ足を取るような批判が噴出しており、政策の中身に関する本質的な議論はこれから、といった様相となっています。

しかし、「日本はあらゆる国民が活躍する機会を、平等に得ることができる国なのかどうか?」といった視点から考えてみると、日本は他国と比べても改善するべき点が多々ある国であることは、否めない事実です。特に雇用の面では、雇用の流動化が進んでいないため、中高年になってから仕事を失うと、どんなに有能な人でも希望する職に就ける機会が激減し、その結果生活が困窮してしまうといった、構造的な雇用リスクを抱えている国でもあります。

中高年になってから何らかの事情により職を失った人にとって、日本は先進国の中でも最も冷淡な国のひとつであるといえるでしょう。よって、政府が「一億総活躍社会」の実現に本気で取り組むのであれば、中高年になって一度職を失った人でも、再び安定した職に就ける機会を得やすくするための政策の検討が不可欠だと考えられます。

■欧米との「開業率」「廃業率」比較
日本は先進諸国と比べても、「開業比率」及び「廃業比率」が低いのが特徴です。下のグラフは、主な欧米諸国と「開業率」と「廃業比率」を比較したものです。
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                           <総務省HPより転載>

特に「開業率」については、欧米諸国と比較して極めて低く、フランスの1/3、米国の1/2以下のレベルに留まっています。一方で、企業の生存率をみると、10年後に存在している企業の割合は約7割程度であり、約3割の企業が創業後10年経たないうちに廃業に追い込まれている実態があります。

このような状況をみると、中高年になって会社を辞めて起業し、失敗に終わった場合、日本では中高年ホワイトカラーの転職市場が整備されていないので安定した職に就けず、生活が困窮してしまうリスクが高いといわざるをえません。このような状況の中で、わざわざ高いリスクを負ってまで起業しようという人が増加しないのは、当然のことだろうと思います。

また、大企業から中小企業等への転職についても同様です。「40歳を過ぎて取引先から誘われたので、思い切って大企業から中小企業に転職をしたところ、数年後に業績が悪化したため、再度転職先を探しているが、全く職がみつからない。」などといった話は、掃いて捨てるほどあるのが現実です。

「現在はどの企業も人手不足であり、完全雇用に近い状況なのだから、仕事さえ選ばなければ良いはず。贅沢な悩みだ。」といった批判もありますが、人手が極端に不足しているのは主にサービス業や流通業、建築業などの「現場仕事」の領域に偏っており、「45歳以上、大卒。文系ホワイトカラー層」などに限定した場合、年齢が壁となり、一部の業種や職種を除くと、再就職は極めて困難な状況にあることは変わりません。

このような現状が長らく放置されていたため、人材採用市場においては、就活する学生の「大企業への一極集中化現象」が顕著になっています。新卒の段階で中小企業に入社してしまい、自分が中高年といわれる年代になった時に会社が傾くと、転身が難しいことなど、現在では殆どの学生が知っているため、誰でもが新卒で大企業を目指す「寄らば大樹」傾向が、この数年益々強くなっています。

このように、「中高年層ホワイトカラーの転職市場」が実質的に存在しないまま放置されていると、起業大国を目指す日本で、今後起業する人材が増える保証はなく、また日本企業の99%を占める中小企業には、優秀な人材ほど行かなくなるでしょう。その結果、生産性の低い中小企業では経営革新が起きにくくなり、企業の新陳代謝も進まないため、中長期的には日本企業の国際競争力の低下を招く恐れが生じると考えられます。

■「中高年ホワイトカラーの転職市場」創設に求められる「年功序列制度」の見直し
なぜ日本で、中高年ホワイトカラーの雇用が問題になるのかというと、その背景には「日本型年功序列制度」の存在があると言えるでしょう。日本型年功序列制度は、終身雇用とリンクし、「年齢」によって給与や等級を決定するウェイトが高い、という特徴があります。

よって、仮に45歳の人が30歳前半までという年齢制限を設けて人材の採用を行っている企業に対して、「御社の30歳の人と同じ仕事で、かつ同賃金で良いので、採用していただけませんか?」と申し出たとしても、採用になる可能性は極めて低いと言わざるをえません。年功部分のウェイトが高い給与制度を採用している企業が多いため、45歳の人を採用した場合、この「年齢給」の部分が高くなってしまうからです。その結果、実務能力は中高年人材のほうが高かったとしても、給与や処遇の面から、中高年人材ではなく若い人を採用しておこう、ということになりがちなのです。

なお米国では、一般的に年齢による差別は禁止されています。また定年制も禁止されている州が多いようです。給与も、その職務のパフォーマンスに合わせて支給される「職務給」のウェイトが高い給与制度を採用している企業が殆どです。 よって米国では、日本と比較すると「能力の差」による雇用リスクはあるものの、本人の努力ではどうにもならない「年齢の差」による雇用リスクが生じる確率が低く、中高年であっても年齢に関係なく、実力さえあれば自分に適した仕事を見つけて活躍できる社会を構築しています。

政府が本気で「1億総活躍社会」の実現を目指すのであれば、企業に対して「日本型年功序列制度」に基づく「年功給」中心から、人材が流動しやすい欧米型「職務給」のウェイトの高い報酬制度にシフトを促す政策を、強力に進めていく必要があります。

仮に起業や転職に失敗した場合でも、実力さえあれば年齢に関係なくリヴァイブが可能な「中高年ホワイトカラーの転職市場」が整備されれば、能力の高い人材がリスクを取って起業して新たな事業を創出したり、中小企業に入社する人が増え、社会に活力をもたらす可能性が高くなります。

以上から日本政府には、「1億総活躍時代」の実現のために、是非「中高年ホワイトカラーの転職市場の活性化」についても、本気で検討していただきたいと思います。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

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まさに仰るとおりだと思います

文章の隅から隅まで、まさに仰る通りだと思います。
「中高年ホワイトカラーの転職」を何度も行っている私もさすがに64歳(来月には65歳)ともなると難航しています。

年齢など今更どうしようもない「壁」が高くそびえ立ち行くてを塞ぎます。

一方では「老害シニア」などという言葉で一羽ひとからげ扱いにされ、これも高い壁です。

一人一人、顔が違うように能力も違うのにね。

Re: まさに仰るとおりだと思います

ミー太様。 コメントありがとうございます。欧米と比べて日本の企業社会では、「年齢」という物差しが「能力」という物差しよりも重視される傾向があることに、個人的には相当な違和感を感じております。ビジネスもグローバル化している現在、日本企業もそろそろ「年齢」を軸に人材管理を行うシステムを改め、年齢や性別等に囚われず、標準的な欧米企業のように「能力」を軸に人材管理を行っていく方向にシフトしていく時期が来ているのだろうと思います。来月65歳になられるとのこと、転職活動には、いろいろとご苦労もお有りかと思いますが、年齢を重ねられている点を逆にアピールポイントにされ、是非成功していただきたいと願っております。
プロフィール

川崎 隆夫

Author:川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション代表取締役。 経営士/経営支援アドバイザー。経営学修士(MBA)。専門は新規事業開発、マーケティング戦略立案、リーダー人材育成など。 また最近は、教育機関・経営支援団体等でのセミナー、講演やメディア出演等にも積極的に取り組んでいます。
【メディア出演実績】 
日本テレビ系列「情報ライブ・ミヤネ屋」、テレビ東京「ニュース」、NHK-BS1,日経産業新聞、東京新聞、週刊SPAほか多数 

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