SMAP問題を解決に導く「事業価値」という概念

男性歌手

一部報道によると、SMAPの解散は、ジャニーズ事務所の企業イメージにも、少なからず影響を与えているようです。仮にこのままSMAPが解散してしまった場合、ジャニーズ事務所のイメージに傷がついたままの状態となってしまい、今後のジャニーズ事務所の業績にも、全く影響が出ないとは言い切れない状況のようです。そこで今回のSMAP解散は、ジャニーズ事務所にとっても望ましいことでは無いのだろうと勝手に想像し、問題をうまく解決できる手段が無いものか、改めて考えてみました。

■SMAP関連事業の「事業価値」
筆者はSMAPの解散について、多くの報道にあるように人間関係などの「情実」の面だけから解決策を考えるのではなく、「ビジネス」という側面からも併せて考えてみることで、初めて解決への道筋が見えてくるのではないかと思っています。そこで今回は、SMAP関連のビジネス全体をひとつの事業として捉え、「事業価値」という側面から考えてみたいと思います。

一部報道によると、SMAP関連事業全体の売上は、ジャニーズ事務所全体の推定年商約1000億円のうち、約1/5の200億円程度であると報じられています。よってジャニーズ事務所は、SMAP関連事業の売上全てを失ったとしても、全体売上の1/5程度を失うだけに留まるため、業績面での大きなダメージは少ないと考えているのかもしれません。

しかしSMAP関連事業は、不動産や株式と同様に「資産価値」も有していると想定した場合は、少し様相が変わってきます。参考までに、ジャニーズ事務所の同業で、サザンオールスターズや福山雅治さんなどのマネジメント等を手掛ける株式会社アミューズの時価総額を見ると、9月12日現在で約334億円となっており、アミューズが手掛ける全事業には、約334億円の価値があるということになります。

続いてアミューズの2016年3月期の決算を見てみると、売上は約489億円、純利益は約35億円となっています。そこで、アミューズとジャニーズ事務所は同業なので、両社は似たような収益構造になっており、経営戦略や経営方針についても類似点が多いだろうと仮定した場合、ジャニーズ事務所の「SMAP関連事業」の売上はアミューズの41%程度に相当するため、「SMAP関連事業」の事業価値も、単純計算では、アミューズの約41%に相当する137億円程度になるのではないか、と考えることができます。

要はジャニーズ事務所内で現在SMAP関連事業を運営・管理している部門が、仮に株式会社として独立しており、その株式全てを投資家等に売却できると仮定した場合、137億円程度の資金を調達できる可能性がある、ということになります。 よって今回のSMAP解散により、ジャニーズ事務所は、「SMAP関連事業」が生み出す利益を失ったに留まらず、137億円程度の価値があったかもしれない「優良資産」をも、手放す判断をしてしまった可能性があるのです。

なおジャニーズ事務所は非上場企業であり、財務諸表等の経営関連情報はもとより、経営方針等も一切開示していませんので、事業価値算出の根拠となる数字や情報が誤っている可能性があります。加えてジャニーズ事務所とアミューズとは、所属するタレント、アーティスト等のジャンルも違いますし、実際は経営方針や収益性、成長性等も異なっている可能性もあるため、上記事業価値の数字は、あくまでひとつの「目安」として捉えていただきたいと思います。

一般論ですが、年商1000億円程度の企業において、経営者と事業部門のトップとの間に確執があったとしても、経営者の一存で、その企業の売上全体の約2割を占め、また事業価値も130億円以上と推定される事業部門のトップをいきなり更迭し、併せてその事業部門をも閉鎖してしまうなどといった経営判断が下されることは、普通の企業では考えにくいことだろうと思います。

各種報道にあるように、仮にSMAPの解散は、様々な人間関係のもつれが主な要因で起きた出来事であり、その結果ジャニーズ事務所は、大きな事業価値を有していると推察される事業を失う羽目に陥ったのだとしたら、非常にもったいない話だと思います。

一方で、「SMAP事業の事業価値」を創り出している源泉は、ファンの支持です。よって、今回のSMAP解散発表により、ジャニーズ事務所は「約137億円に匹敵するファンの支持」も併せて失った可能性があります、これも実にもったいない話です。よってジャニーズ事務所は、再度この事業価値の大きさに着目し、SMAPの解散撤回を含めた「SMAP関連事業」の継続について、改めて検討し直すことが望ましいのではないか、と思います。

■SMAP関連事業継続のためのスキーム案
今後SMAPの解散を回避し、SMAP関連事業を継続していくためには、現在のスキームではなく、新たなスキームを組むことが必要ではないかと思います。 その一つとして、以下のようなスキームが考えられます。

1.「SMAP関連事業」に加え、以前元女性マネジャーが手掛けていたグループやタレント等を担当している部門を独立させ、ジャニーズ事務所の出資により新会社を設立し、ジャニーズ事務所の子会社という位置づけとする。

2.代表権はジャニーズ事務所の経営者等が持つとしても、「最高執行責任者」(一般企業のCOOに相当)として元女性マネジャーを迎え、新会社全体のマネジメントを担っていただく。

3.役員や経営幹部には、ジャニーズ事務所関係者以外に外部から経営等の専門家を招くとともに、上場企業並みのコンプライアンス、ガバナンス体制も構築する。

4.現在の「SMAP関連事業」のビジネスモデルを継承しながらも、グローバル化やネット動画対応なども視座に入れた成長戦略も策定する。

また上記スキームを構築した際のメリットとしては、以下が挙げられます。

1.SMAP解散を回避できれば、ジャニーズ事務所の企業イメージの回復につながる可能性がある。

2.ジャニーズ事務所は、近い将来「SMAP関連事業会社」の株式を上場させるか、あるいは投資家等に株式の一部を売却することにより、多額の資金を調達できる可能性が生まれる。またSMAPメンバー等の関係者にも、ストックオプション等により株式の一部を割り当てた場合、関係者も株式売却益を得られるため、メンバー等のモチベーションアップにつながる可能性がある。

3.元女性マネジャーが担当していたグループやタレントを、新たに設立する子会社に移籍させることにした場合、ジャニーズ事務所本社所属のグループ、タレント等との「序列」が明確になるため、一部報道にあった「派閥争い」も消滅する可能性がある。

4、一部メディアで、ジャニーズ事務所に残ることを選択したと報じられた木村拓哉さんも、このスキームであればジャニーズ事務所と新会社の両方に籍を置くことができるため、他のSMAPメンバーとともに、支障なく活動できる可能性が生まれる。

このようにSMAPを含め、以前元女性マネジャーが担当していたグループ、タレント関連の事業をジャニーズ本体から切り離し、子会社に移管させてマネジメントを行うことで、SMAPの解散を回避できる可能性が生まれるとともに、今後SMAP関連事業を含めた新会社が行う事業全体の成長も期待されます。

■安倍首相の「歩み寄り」事例
報道によると、安倍晋三首相は、東京都知事選で激しく争った結果、敗北を喫した相手である小池百合子東京都知事と8月に会談した際に、「自民党は、きつい一本を取られましたが、東京五輪を成功させるため、政府と東京都が協力しなければならない。それが民意です。」と述べたそうです。

これは安倍首相が民意を優先して首相というプライドを捨て、小池氏に自ら歩み寄った事例だと言えそうです。一方で、安倍首相は小池氏に謝罪した訳ではなく、歩み寄っただけですので、安倍首相のメンツも保たれています。よって、「きつい一本を取られた。」という安倍首相の発言は、お互いの歩み寄りを促進する意味において、実に見事な表現だったと思います。

ジャニーズ事務所も、「SMAP解散回避」という「民意」を受けて、「安倍首相の歩み寄り事例」をモデルにして自ら歩み寄り、メンバーや元女性マネジャーを含む関係者全員で、本当にこのままSMAPを解散させてしまってよいのかどうか、再度話し合う場を設ける努力をすることが望ましいと思います。

関係者全員の話し合いにより、「大きな事業価値があると推定されるSMAP関連事業の主体であるSMAPを解散させてしまうことは、非常にもったいないことだ。」といったコンセンサスが生まれたとしたら、事態はSMAPの解散回避など、多くのファンが望む方向に向かうかもしれません。今後、是非良い方向に向かってほしいと思います。

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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

プロフィール

川崎 隆夫

Author:川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション代表取締役。 経営士/経営支援アドバイザー。経営学修士(MBA)。専門は新規事業開発、マーケティング戦略立案、リーダー人材育成など。 また最近は、教育機関・経営支援団体等でのセミナー、講演やメディア出演等にも積極的に取り組んでいます。
【メディア出演実績】 
日本テレビ系列「情報ライブ・ミヤネ屋」、テレビ東京「ニュース」、NHK-BS1,日経産業新聞、東京新聞、週刊SPAほか多数 

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