「SMAP解散」で気になる、ジャニーズ事務所のマネジメント

ジャニーズ

8月14日、ジャニーズ事務所は、SMAPが12月31日をもって解散することを発表しました。その解散声明の中で、『「今の5人の状況ではグループ活動をすることは難しい」というメンバー数名からの要望』があったことや「全員一致での意見はないものの解散したいメンバーがいる状況」であることなどを明らかにしたことで、その後様々な報道が飛び交い、ジャニーズ事務所の企業イメージにも、少なからず影響を与えているようです。

■ジャニーズ事務所の企業イメージ
今回の一連の報道に対するネット上のコメントなどを見ると、木村拓哉さんを除く他の4人のメンバーに対して同情的なものが多く、逆にジャニーズ事務所の対応などに対しては、厳しいコメントが多数散見されます。よってジャニーズ事務所の企業イメージは、SMAPの独立・解散が報じられる以前よりも低下しているのではないか、と懸念されます。

不思議なのは、ジャニーズ事務所は元々所属タレントのイメージの維持向上に極めて熱心な事務所であるにもかかわらず、ジャニーズ事務所そのものの「企業イメージ」の維持向上には、やや無頓着な面があるように感じられることです。

一般のサービス業では、いくら魅力のある商品やサービスを販売・提供していたとしても、販売元である企業やショップのイメージが著しく悪い場合、中長期的には顧客の離反が増加し、収益の悪化を招くリスクが高くなります。それは芸能界であっても変わらない原則なのだろう、と思います。

ジャニーズ事務所も当然ながら、SMAPが解散に至った原因の一部を公表したのですから、ある程度の批判を浴びることは覚悟していたものと推察されますが、ここまで批判を浴びる結果になることについては、想定外だったのではないか、と推察されます。なぜジャニーズ事務所は、「世論」の動向を見誤ったのでしょうか?

■中小企業等で散見される「ワンマン経営」の弊害
各種報道によると、ジャニーズ事務所自体は資本金1000万円の「中小企業」にすぎないものの、多くの関係会社や子会社を持ち、グループ全体の売上は約1000億円にも上り、SMAP関連事業の売上だけでも200億円を超える規模に達するようです。 よってグループ全体の事業規模は、「大企業」と同等のレベルにあると考えてもよさそうです。

一方で、ジャニーズ事務所では平均的な中小企業と同じく、社長、副社長が絶対的な権力を持ち、特に経営面における重要な意思決定は、全て副社長が行ってきたと各種メディアで度々報じられています。ただし、これが仮に事実だとしても、日本企業の大半は同族会社であり、その多くは経営者が大きな力をもっていますので、それ自体は非難されることではありません。しかしながら、経営者の「ワンマン経営」が行き過ぎた場合には、一般的に以下のような弊害が生じやすいリスクが指摘されています。

1.「情実人事」の横行
社員の評価が、仕事の評価よりも経営トップの「好き嫌い」に偏る傾向がみられ、一旦経営者に嫌われると、いくら仕事で実績を上げても正当に評価されない社員が増える。それにより、やる気のある社員ほど正当な評価がされないため、自らのモチベーションを上げることが困難になるため、退職者が増加する傾向が顕著となる。

2、自律性に欠け、社員間の疑心暗鬼も生まれやすい社風が形成
経営者の顔色を窺い、指示を受けて行動する社員ばかりとなり、自らアイディアを出して行動する自律的な社員が育たない。また経営者に取り入るために、讒言を行う社員が出現するなど、社員間の疑心暗鬼が生じやすい組織風土が形成されるリスクがある。

3.「経営リスクへの対応」が後手にまわりやすい
廻りがイエスマンばかりとなり、経営者が喜ぶような情報ばかりを報告するようになる。一方で、顧客からのクレーム情報など、経営者の耳の痛い情報が下から上がってくるケースが激減し、経営者が「裸の王様」になってしまうリスクが生じる。その結果、顧客からのクレームへの対応が遅れるなど、企業業績に重大な悪影響が生じる場合がある。

4.企業に不利になる「重要な情報」を隠蔽
一般的に「ワンマン経営」の傾向が強い企業においては、社外はもちろんのこと、社内に対しても、その企業に不利になると予想される重要な情報を開示せず、逆に隠蔽してしまう場合がある。(例:株式会社ヒューザー「マンション構造計算書偽造事件」)

以上のような弊害が顕著になると、企業の存続に黄色信号が灯ることにもなりかねません。ジャニーズ事務所においても、一部の中小企業と同じく、このような兆候がみられるようであれば、マネジメント全般を見直す時期に差し掛かっている可能性があります。

■芸能プロダクションにおける「コーポレートガバナンス」
ジャニーズ事務所と同業にあたる芸能プロダクションの中に、サザンオールスターズや福山雅治さんのマネジメントなどを手掛けている株式会社アミューズという企業があります。アミューズは、株式を上場している上場会社ですので、株主に対して経営上重要な情報にを、定期的に開示しています。例えばアミューズのサイトでは、財務諸表や企業理念、ビジョン、経営方針はもとより、所属アーティストに関する重要な情報等も定期的に更新されており、情報公開についてはジャニーズ事務所よりも、ずっと積極的であるといえそうです。

また「コーポレートガバナンス」に関する基本方針も掲載しており、経営上の意思決定に関するプロセスを明示するとともに、「的確・明確な意思決定」を迅速に行うための組織体制も整えているようです。

仮にジャニーズ事務所が、アミューズ同様上場企業であったと仮定すると、週刊文春が昨年報じた「ジャニーズ事務所の副社長が、女性マネジャーに対して、SMAPを連れて独立するように促した。」という主旨の記事が事実であった場合、業績の悪化を招くリスクが高い言動であるため、株主に対して説明責任を果たす必要が生じたはずです。

また今回のSMAP解散決定についても、仮に解散に至った経緯が、ジャニーズ事務所のマネジメント上の問題が一因であった、ということになれば、株主からジャニーズ事務所の経営責任を問われる可能性もあります。このように、芸能プロダクションという業態であっても、株式を上場したり、上場企業と同様のガバナンス体制を構築することができれば、外部のステークホルダーから経営陣に対するチェックが入るため、「ワンマン経営の弊害」を、いくらかでも軽減できる可能性が高くなります。

■ガバナンス改革による企業イメージのアップを
安倍晋三首相は、今年1月の参院予算委員会において、「SMAPが活動を継続する意向を表明したことを、歓迎したい。」といった趣旨の答弁をしています。また、小池百合子東京都知事も、今回SMAPが解散を表明したことに触れ、「大好きな楽曲があるので、残念ですね。」といった趣旨のコメントを出しています。このように、SMAPは首相や東京都知事までがコメントを求められるほど、パブリックな存在になっていたのです。

ジャニーズ事務所には、SMAP以外にも「嵐」や「TOKIO」など、SMAP同様にパブリックな存在といえるグループやタレントが多数在籍しています。今後、今回の「SMAP騒動」のような事態が起きるリスクを抑止し、大企業並みの規模をもつ事業展開を継続していくためには、ジャニーズ事務所自体も中小企業に多い「ワンマン経営」形態から卒業し、アミューズなどの上場企業が、成長過程で行ってきた経営改革に着手する必要があるように感じます。

そのためには、上場企業と同レベルのガバナンスの整備に取り組むと同時に、積極的な情報開示、社内コミュニケーションの充実などの改革も併せて行っていく必要があるのではないか、と推察されます。

ジャニーズ事務所は経営者が高齢のため、事業承継の時期にあるようです。よって経営者は事業承継を良い機会として捉え、「パブリックなサービスを提供している企業」であることを再認識し、ガバナンス改革等への着手を通じて、社会的な信頼を取り戻すことが望ましい、と考えられます。それが所属タレントや社員はもとより、多くのファンにとっても、最善の策になるのではないかと思います。
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テーマ : 政治・経済・時事問題
ジャンル : 政治・経済

プロフィール

川崎 隆夫

Author:川崎 隆夫
株式会社デュアルイノベーション代表取締役。 経営士/経営支援アドバイザー。経営学修士(MBA)。専門は新規事業開発、マーケティング戦略立案、リーダー人材育成など。 また最近は、教育機関・経営支援団体等でのセミナー、講演やメディア出演等にも積極的に取り組んでいます。
【メディア出演実績】 
日本テレビ系列「情報ライブ・ミヤネ屋」、テレビ東京「ニュース」、NHK-BS1,日経産業新聞、東京新聞、週刊SPAほか多数 

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